はじめに

右打者にとって大切なのは左腕の使い方だ!

いや、右腕の使い方でしょ!
このような議論を耳したことがある人も多いのではないでしょうか?
バッティングにおける腕の使い方は、指導者によって色々な意見がありますが、感覚的な説明が多く、論理的な説明をする人は少ないんですよね。
この記事では、前回の記事で解説した『トップの作り方』に続き、そのトップの状態からフォワードスイングに移った際の腕の使い方について解説します。
打者が適切な腕の使い方をすれば、必ずスイングスピードは速くなりますからね。
< 参考記事 >
バッティングにおけるトップの作り方について解説しています。

左脇を締めて打っても意味はない!
タイトルにビックリした人も多いのではないでしょうか?

脇を締めて打つんだぞ!
このように指導された人は多いでしょうからね。私も学生時代はそう教わりました。
でも、これは間違っていますからね。
この考え方をしていると、間違った練習をして、どんどん下手になります。
では、右打者における左腕の使い方を説明します。
深いトップを作ってフォワードスイングに移行しますが、バックスイングで捻ってた体を徐々に解いていきます。
投手の投げるボールにタイミングを合わせて左肩を開き、体が投手に正対させますが、ギリギリの所までバットを出すのを我慢します。
そのときの左腕は張っているはずです。そして左脇は締まるのです。
『左脇を締めて打っても意味はない』と書きながら、矛盾していると思われた方もいるかもしれません。
私が言いたいのは『左脇を締める』のではなく、『左脇が締まる』ことが重要だということです。同じようで全然違いますからね。
トップの状態で手に力を入れず、そのままにしている状態から体の捻りを戻して下さい。
そうすれば自然と左腕は張り、左脇は勝手に締まるのです!
反対に、左脇を締めることを意識すると、バックスイングで捻った体を戻すと同時、あるいは先に左腕を始動させ、抜こうとするんですよね。
この状態は、体の捻りを戻しているときにバットを出すことになりますので、慣性モーメントが大きくなり、回転速度が遅くなってしまうのです。
右腕の説明でも詳しく書きますが、脇を締めようと左腕を先に始動すると、左腕の張りがなく縮こまってしまいます。
< 慣性モーメント >
- 「回転のしにくさ」の程度を示す量
- 慣性モーメントが大きいほど、物体は回転しづらくなる
- 慣性モーメントが小さいほど、物体は回転しやすくなる
- 回転半径が大きいほど、慣性モーメントは大きくなる
左腕でリードしている状態ですね。
このスイングでインパクトを迎えると(ボールを捕らえるとき)、インパクト時に左腕を伸ばしたいから、一緒に右腕も伸びてしまいます。
結果的に、右腕が伸びきってインパクトを迎えるので、右腕の押し込みが不足してしまい、強い打球が打てなくなってしまうのです。悪いこと尽くしですね。
逆にフォワードスイングでは腰を先に始動させて、バットのグリップはトップを維持する。そうすれば体の捻り戻しにつられて、腕が自然に出てくるのです。
その結果、左脇は締まっているのです。
ですので、
- 脇を締めて打つ
- 脇が締まる打ち方をする
は同じようで、天地の差があるのです。
右腕の使い方
先程の説明で、左腕は意識せずとも勝手に出てくるものだと書きました。
それに対して右腕はどうでしょうか?
右腕は腰が先に回転したあと、左腕が張ってバットを振り出したときに、スイングを加速させる役目があります。
ポイントは右肘の抜きです!
フォワードスイングに移り、体の捻り戻しにつられて左腕が引っ張られます。
このときバットのヘッドを残しつつ、右肘を先行させるように抜くのです。
写真①
写真①は右肘が先行している例です。インパクトを迎える瞬間ですが、右肘がヘッドより先行していることがわかります。
右肘を先に抜くことによって、バットをさらにタメることができるんです。
後は、勝手にバットが出てきますが、右腕を伸ばすようにすればバットスイングはさらに加速します。その最中にインパクトを迎えて、捉えた球を押し込むのです。
重要なことは『インパクトの瞬間に両腕が伸びきることが理想ではない』です。
伸びきってしまえば、捉えた球を押し込むことが出来ませんからね。インパクトの瞬間は右腕が伸びきる余裕がなければいけません。
両腕が伸びきるのはフォロースルーのときであり、その結果、大きなフォロースルーになるはずです。
便宜上、あえて『捉えた球を押し込む』と表現していますが、物理的にはインパクトの瞬間に『押し込む』ことは不可能です。
- インパクトの瞬間に押し込むことが不可能な理由は、以下の記事で詳しく解説しています。

- インパクトの衝撃に負けない打ち方の解説は、以下の記事で詳しく解説しています。

- フォロースイングの良し悪しについての解説は、以下の記事で詳しく解説しています。

どうぞ、ご参考に。
右肘を抜くには右手のコックが重要
左腕は体の捻り戻しによって自然に出てきますが、右腕は意識して使う必要があるので、難しいと感じるかもしれません。
特に『右肘を抜く』動作ですが、右手のコックを意識すればさほど難しいことではありません。
右肘を抜くときに『ヘッドを残したまま』と書きましたが、それはすなわち、可能な限り体にバット巻きつけておくことと同義です。
体に巻きつけるバットの角度を作るには、右手をコックさせておけば良いのです。
逆に言えば、左腕が体の捻り戻しに引っ張られている状態で、ヘッドを残しつつ右肘を抜こうとすれば、右手のコックは維持されるはずなんです。
右肘を先行させれば、あとはバットのヘッドを加速させるだけですから、余裕のある右腕を伸ばすように動かし、最後に右手のコックを解きます。
この一連の動作でスイングを加速させるのです。
理想的な腕の使い方は、左腕を自然に出し、右肘を抜くこと
バッティングおける腕の使い方を、左腕と右腕に分けて解説しました。
左腕・右腕を使う順序は、以下のようになります。
< 腕の使い方の順序 >
左腕を自然に出す
↓
右肘を抜く
これを左脇を締めることを意識し、左腕を先行して出してしまうと、つられて右腕も出てきますから注意して下さい。
この状態で、いくら右肘を抜こうとしても右腕が既に出ていますので、右肘を抜くことができません。
ちなみに『左脇を締めて』打とうとするとドアスイングになりますので、気をつけて下さいね。
< 参考記事 >
バッティングにおけるドアスイングについて解説しています。

最後に
フォワードスイングの際、体の捻り戻しにより左腕が張れば、自然に左脇は締まります。
同様に、右肘を抜くときも、バットを体に巻きつけるイメージで右手をコックさせれば、右脇が締まった状態で抜くことになります。
これは、意識して脇を締めることと全く違います!
この違いを認識せず、ただ単に『脇を締めろ!』と指導しても、強い打球は打てません。
学生野球において、この違いを理解していない指導者は本当に多い。だから、左脇にタオルや帽子を挟んで素振りをさせたりするんですよね。
今でもやっている学校があるかどうか分かりませんが、こんな練習は時間の無駄ですから今すぐやめて下さい!
これらは、捉えたボールを押し込めない打ち方ですが、これを理想的な三角形(両腕と胸を辺とした三角形)だと言う人も多いんです。
しかし、残念ながら間違っています。
本来、理想的な三角形はフォロースルーのときに出来るものであって、インパクトの瞬間にできるものではないのです!
グリップを先に抜く打ち方は、対戦する投手の球速が速くなるほど、早くグリップを出そうと腕に力が入りますし、体を捻る時間が取れず、より一層手打ちになるんです。
だからちょっと速い投手と対戦すると、全然打球が飛ばないんですよね。
このように『脇を締める』と考えてしまうと、いくら練習しても上手くなるどころか、むしろ下手な打ち方になるだけですから注意して下さいね。
左腕を自然に出し、右肘を意識して抜く。
これをマスターすれば、きっとあなたの打球は遠くまで飛ぶでしょう。
打球を遠くに飛ばすためには、下半身の使い方も重要になります。バッティングにおける下半身の使い方は、以下の記事に詳しく解説しています。

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あとは、今でも多いのは『グリップを先に抜く』と指導すること。
体の捻り戻しの前に、グリップを抜こうとさせますが、そのくせに『手打ちになるな!』と指導します。矛盾していますよね。
グリップを体の前に移動させる(グリップを抜く)と、体の捻り戻しによるタメがないので、スイングは加速しません。
さらに、手を先に指導させているので、体の捻り戻しが不十分なことが多く、肩の開きが不十分なことが多いんです。
この場合、インパクト時に左腕を伸ばそうとすると、左脇を空けるしかありません。さらに、左腕につられて、右腕が伸びきってしまいます。
その結果、両腕が伸びた状態でインパクトを迎えるのです。