なぜ見逃し三振をしたのか?
野球では見逃し三振を『してはいけないこと』『絶対ダメ』だと言われます。学生野球では怒られることも珍しくありません。私もよく怒られました。
でも、私は見逃し三振をした選手を怒っても(体罰は論外です)、成長するとは思いません。
むしろ打撃技術向上の妨げになるとさえ思っています。
指導者は見逃し三振を叱る前に、確認すべき事があります。
それは、『なぜ見逃し三振をしたのか?』です。
課題は何かを見極めてあげるのが指導者の役目
前提として、ケースバッティングが求められる場面は除外します。
ケースバッティングとは試合展開や点差、ランナーの存在を考慮したバッティングです。
この話が入ってくるとややこしくなるので、ランナーがおらず、フリーで打てる場面での見逃し三振を想定して下さい。
見逃し三振をしてしまうには原因があります。
③はレアケースだと思いますが、頻繁にこんなミスがあるようでは困ります。
普段の練習からボールカウント、アウトカウントくらいは確認させる訓練が必要ですが、意識付けをするだけで解消されるでしょう。ベンチから声をかければ済みますし。
②はわりとあるケースですが、『バットぐらい振れよ』と思うかもしれません。
でも問題はバットを振らなかったことではありません。
バットを振れないくらいタイミングを外される方に問題があります。
試合中、自分の打順が来る前から(ベンチにいるときから)、投手のタイミングを合わせる訓練をしているのか?試合だけでなく、普段の練習からタイミングを合わせるように工夫しているか?
投手はタイミングを合わせ易く投げてはくれません。
変化球も投げるでしょう。全ての球種を頭に入れる必要もあります。
叱責すべきは、そういった訓練を怠ったことではないでしょうか?
そうであれば、試合中でなく、試合後に指導すべきだと思います。
でも、そういった練習をしていても出来ないことはあります。
その場合は叱責すべきではないと思いますし、練習で考え方やコツを教え、継続するよう見守ることが必要ではないでしょうか?
一番多いケースが①だと思います。
これも、『あきらかなボールなのに審判がストライクと判定した』『きわどいボールだったが、ストライクだと判断しなかった』に大別されると思います。
あきらかなボールでも審判がストライクと言えばストライクになってしまうのが野球です。
もし、一打逆転サヨナラの状況で、審判にそんな判定をされたら、誰でも気分は良くありません。
でも審判に文句を言えないから、選手にあたってしまう指導者は絶対ダメです。
選手に何を要求するのでしょうか?
『次はストライクゾーンをさらに広げて打て』とでも言うのでしょうか?
これでは選手は成長しません。
おそらく一番多いケースが、『きわどいボールだったが、ストライクだと判断しなかった』だと思います。
ボール・ストライクの見極めに関しては、普段からストライクゾーンを体感する必要がありますし、そのための練習も必要です。
さらに練習から2ストライクを想定したバッティング練習も必要とされるでしょう。
怒る前に、普段からそのような練習を実行していますか?
練習で出来ないこと、練習しないことは、試合では出来ません。
見逃し三振をしかる弊害は大きい
私が言いたいことは、『見逃し三振を怒ったり、叱ったりしてはいけない』ことです。
怒ったり、叱ったりするのは、課題があきらかになっている選手が、克服する練習を怠ったときではないでしょうか?
逆に、見逃し三振を怒ったり、叱ったりすると大きな弊害があるんです。
選手も怒られたくないから学習します。でもスキルを上げることは簡単ではありませんよね?
だから楽に回避する方法を思いつくんです。
それは・・・
『早いカウントから打てばいい!』
なんです。
見逃し三振が起こる状況を作らなければ、見逃し三振をしませんからね。
でも、選手の打撃能力は向上しません。
なぜなら、余裕のあるカウントから難しい球を打ちにいくようになるからです。
1打席で2回まではストライクを見逃せますので、3球はチャンスがあるはずなんです。
見逃し三振を怖がるようになると、2回ストライクを取られると嫌ですから、その分余裕が無くなります。
その結果が、打者有利なカウントでも難しい球を打ってしまうのです。
これでは上達するはずがありませんし、むしろ下手にさえなります。
よく、『振らなければ何も起こらないだろ!』と言う人がいますが、振ることによって生じる弊害も考えてもらいたいです。
『バットに当てさえすれば、何が起こるか分からないんだから』という言葉も聞きますが、野球のレベルが上がれば上がるほど、何かが起こる可能性が低くなります。
私は『何かが起こる(相手のエラー)』という期待のために、選手の成長を妨げることは、到底理解出来ません。
でも私が現役の頃は、こうしたバッティングを繰り返す選手を多く見てきました。
特にレギュラーになりきれない選手は、監督から評価されたいので、評価を落とす『見逃し三振』を嫌う傾向にありました。
だから初球から難しい球を打って簡単にアウトになるんです。
自分の得意な球種やコースが来る前に打ってしまうんですね。
打席でじっくり待てないんです。
結果としてレギュラーは遠のいてしまって、負のスパイラルに陥ります。
練習で打てても、本番で力を発揮できないんです。
さらに、安易に難しい球を凡打にしたことを怒ったりすればどうなるでしょうか?
見逃し三振をする状況を避けても怒られ、見逃し三振をしても怒られる。選手は追い詰められていきます。
指導者によっては、『このような困難な状況を打破できなけば成長しない』と考える人も多くいます。
でも私はそう思いません。
本当に追い詰められた選手は逃げたくなるだけです。
打席に入ることが怖くなります。
いずれ野球も嫌いになります。
別に楽しんでやれとは言いません。
むしろ厳しさの中に成功があって楽しくなると思っています。
でも、技量が足らない人を追い込んでも、成長はしませんし、成長を促すには、それなりのプロセスが必要になります。
指導者は選手の課題をいち早く見つけ、克服する環境を整えてあげるのが役目なんです。
私は、指導者が見逃し三振した選手を叱っている姿を見ると、空しい気持ちになってしまいます。