この記事の目次
バッティングでタイミングを取るポイント
今回は、バッティングにおけるタイミングの取り方について解説したいと思います。
一連のバッティング動作の中で、タイミングをとるポイントは3つあります。
これから説明する3つのポイント以外でタイミングを取ってしまうと、強打できなくなることもあるので注意して下さいね(後ほど説明します)。
バッティング動作を細かく分けると、以下のようになります。
- 構えた状態で、投手を凝視
- バックスイングを開始し、体を捻りトップを作る
- 体を捻り戻し、体が投手に正対する
- 右肘を抜いてフォワードスイングを加速させる
- インパクト(ボールを捉える)
- フォロースルー
※右打者の場合
この動作の中でタイミングを取るポイントは、以下の3つです。
- 構えた状態で、投手を凝視
- バックスイングを開始し、体を捻りトップを作る
- 右肘を抜いてフォワードスイングを加速させる
それぞれについて、解説したいと思います。
【ポイント1】構えた状態で、投手を凝視
打者が行う最初の動作であり、投手が投げるタイミングを見定めている状態です。
タイミングを取るコツは以下の通りです。
- 絶対に、構え遅れをしない!
- タイミングが早くても構わない
- 腕の力を抜いてリラックスする
- タイミングを取るのは手でも良いし、足でも良い(やり易い方を選ぼう)
最も重要なことは、
絶対に、構え遅れをしない!
ことです。
構え遅れとは、構えるのが遅いことが原因でタイミングを取ることが遅れてしまうことです。
仮にポイント1でタイミングが遅くなったとしても、
後の動作でタイミングを早めればいいんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、バッティングに必要な動作を省くことなどできないんです。
バッティングに必要な動作を省いてしまうと、強い打球を放つことができず、弱い打球しか打てなくなりますからね。
【重要】始動後はタイミングを早めることができない!
冒頭に、『タイミングは3つのポイントで取る』とお話しましたが、3つのポイントで時間を足したり引いたりしてタイミングを合わせるわけではありません。
バッティング動作を指導させた後に、タイミングを遅らせることはできても、タイミングを早めることはできないのです。
もっと具体的に言えば、始動後にタイミングを早めることはやってはいけません。
以下に、間違ったタイミングの取り方と正しいタイミングの取り方を例に挙げて解説したいと思います。
以下のようにタイミングを表現します。
- 『+』はタイミングが遅れている
- 『-』はタイミングが早まっている
間違ったタイミングの取り方
< 間違ったタイミングの取り方 >
- ポイント1:+2(トータル+2)
- ポイント2:-1(トータル+1)
- ポイント3:-1(トータル0)
ポイント1で遅れたタイミングを、ポイント2とポイント3でタイミングを早めることによって帳尻を合わせています。
しかし、バッティング動作の中でタイミングを早めることなどできません。正確に言えば『早めてはいけない!』のです。
ポイント2の動作は、バックスイングを行ってトップを作っていますよね?
この動作を早めてしまうと、バックスイングが小さくなり、浅いトップを作ってしまうことになります。
スイングスピードを速めるためには、しっかりとしたバックスイングを行い、深いトップを作ることは必須ですから、タイミングを取るためにスイングスピードを落とすことはナンセンスです。
深いトップを作る合理的な理由は、以下の記事に詳しく解説しています。
ポイント3の動作は、右肘を抜いてフォワードスイングを加速させることです。
タイミングを早めようとすると、必ず前段階の『体を捻り戻し、体が投手に正対する』の動作中に、右肘を抜きにかかってしまいます。
これは、体の捻り戻しが終る前にバットを出す動作ですので、ヘッドが溜められておらず、スイングスピードを加速させることはできません。
ちなみに、これはドアスイングの典型的な例ですから絶対にやってはいけない動作なのです。
ドアスイングの詳しい解説は、以下の記事にまとめました。
このように、バッティング動作を始動してからタイミングを早めることはできないのです。
物理的にはタイミングを早めることは可能でしょう。
しかし、それをやってしまうと力強いバッティングに必要な動作を省くことになりますので、やってはいけないのです!
正しいタイミングの取り方
< 正しいタイミングの取り方 >
- ポイント1:-2(トータル-2)
- ポイント2:+1(トータル-1)
- ポイント3:+1(トータル0)
ポイント1で早めたタイミングを、ポイント2とポイント3で遅らせて全体のタイミングを取るのです。
このようにタイミングを遅らせることができるかどうかで、打者のタイミングを取る能力が決まるのです。
バッティング動作を始動してからタイミングを早めることはできませんが、遅らせることは可能です。
ちなみに、このタイミングを遅らせる動作を
バッティングの間
と言います。
唯一、タイミングを早めることが可能なのは、ポイント1の『構えた状態で、投手を凝視』状態なんです。
だからこそ、構え遅れをしてしまうと取り返しがつかないのです。
【ポイント2】バックスイングを開始し、体を捻りトップを作る
バックスイングの目的は体に捻りを作ることです。
ですので、ゆっくり体を捻っても、結果的にしっかりと体が捻られていれば問題ありません。
この動作の途中でタイミングを遅らせることが可能になります。
さらに、トップを作った後にも時間的猶予があります。
正確に言えば、トップを作り終えてから体を捻り戻すまでの時間は遅らせることが可能であり、タイミングを遅らせることができるのです。
タイミングを取るコツは以下の通りです。
- 体を捻りつつ(バックスイング)、投手の動きを観察する
- トップを作っても腕に力を入れないこと!
- この段階でタイミングが早くてもOKだと考える
ポイント2で重要なことは、
絶対に、腕に力を入れない!
ことです。
この動作の後に、体の捻り戻しを行いフォワードスイングに移行するわけですが、体の捻り戻しは下半身主導の動きであり、腕から行う動作ではありません。
腕に力が入ってしまうと、タイミングを取ることに気を取られて、腕からフォワードスイングを行ってしまいますからね。
【ポイント3】右肘を抜いてフォワードスイングを加速させる
タイミングを遅らせることができる、最後のポイントとなります。言い換えれば、タイミングを微調整するポイントですね。
体を捻り戻し、体が投手に正対したら、最大限バットのヘッドが溜められている状態です。
この状態を維持することが、最後のタイミングを遅らせるポイントなのです。
ここから右肘を抜きにかかった瞬間、フォワードスイングを加速させる動作に入ったことになりますので、もうタイミングを遅らせることはできません。
そんなことをしたらフォワードスイングにブレーキをかける動作になってしまいますからね。
タイミングを取るコツは以下の通りです。
- 体の捻り戻しが終ってから、右肘を抜くこと
- 右肘を抜くときに腕に力を入れること
- 腕に力を入れたら、躊躇してはいけない
ポイント3で重要なことは、
体の捻り戻しが終ってから右肘を抜くこと
ということです。
そして、この動作こそ本当のインサイドアウトスイングなのです。
ドアスイングの選手は、このポイント3でタイミングを合わせることはできません。なぜなら、体を捻り戻している最中に右肘を抜こうとしていますので、もう時間を遅らせることはできないからです。
これは、しっかしとしたインサイドアウトスイングができる選手だけが得られるタイミング調整ポイントなんです。
だからこそインサイドアウトスイングには優位性があり、選手が身につけるべきスイングだと言われるのです。
タイミングの調整幅・難易度一覧表
これまで解説したバッティングでタイミングを取る3つポイントについて、タイミングの調整幅と難易度を一覧表にまとめます。
< タイミング調整幅と難易度一覧表 >
タイミング調整幅 | 難易度 | 備考 | |
ポイント1 | 広い | 誰でも | 特になし |
ポイント2 | 狭い | 普通 | 深いトップを作れる打者 |
ポイント3 | 極めて狭い | 難しい | インサイドアウトスイングができる打者 |
< ポイント1 >
構えた状態で、投手を凝視
< ポイント2 >
バックスイングを開始し、体を捻りトップを作る
< ポイント3 >
右肘を抜いてフォワードスイングを加速させる
打撃技術とタイミング調整力の関係
打者が持つ打撃技術と、タイミングを合わせられる力の関係をいくつかの例を挙げて説明します。
始動のタイミングでしか合わせられない打者
このような打者の特徴は以下の通りです。
- 深いトップを作ることができない(ポイント2でタイミングが取れない)
- インサイドアウトスイングができない(ポイント3でタイミングがとれない)
始動でとったタイミング(ポイント1)でしかタイミングを取れないので、ほぼ勘に頼ったタイミングの取り方と言えます。
このような打者は打率が低くなるのは当然ですし、タイミングを取るために変なポイントでタイミングを早めたり、遅らせたりしますので、力強いスイングができる可能性が低下してしまうのです。
一般的に「1・2・3」で振る打者ですね
大きな緩急にはついていけるが、小さな緩急に弱い打者
このような打者の特徴は以下の通りです。
- 深いトップを作ることができる(ポイント2でタイミングが取れる)
- インサイドアウトスイングができない(ポイント3でタイミングがとれない)
ポイント2でタイミングを取れるので、大きな緩急(例えばカーブ)に崩されることはほとんど無いでしょう。
しかし、スライダーなどに代表される小さな緩急に合わせることが難しくなります。
よく打つことがある反面、もろい面もある打者ですね。
一般的に「1・2~3」で打てる打者です!
どんなボールでも柔軟に対応できる打者
このような打者の特徴は以下の通りです。
- 深いトップを作ることができる(ポイント2でタイミングが取れる)
- インサイドアウトスイングができる(ポイント3でタイミングがとれる)
大きな緩急にも、小さな緩急にも対応できる打者です。
細かな微調整をしてタイミングを合わせることができるので、確率の高いバッティングができるでしょう。
さらに好不調の波が小さくなり、まさに強打者と言えます。
表面的には「1・2~3」で打てる打者と同じように見えますね。
しかし、安定感が段違いに違います!
タイミングを合わせる禁断の技
フォワードスイングを開始して、タイミングが早いと感じた場合、多くの打者がやる禁断の技があります。
それは右打者なら左手首を、左打者なら右手首をアンコックすることです。
打者が投手寄りの手首をアンコックすると、ヘッドが投手側へ向くことになります。
これによりボールとバットの距離を縮め、打つタイミングが早いことをカバーしようとするのです。
この打ち方は、まさに禁断の技なんです!
この打ち方をするとき、2ストライクと追い込まれている場合は仕方がありません。空振りできませんからね。
でも、追い込まれたとき以外に使うべきではありません。
理由は、インパクトの衝撃に負けて強い打球が打てないからです。無理をしてフェアグラウンドに打球を飛ばしても、強い打球を打てなければヒットになる確率は下がってしまいますからね。
このことを理解せず、打者有利なボールカウントに関わらず、このような打ち方をする打者は結構いるんです。
中には、『上手く打ったなぁ~』と勘違いしている選手もいるくらいです・・・
しかし、こんな打ち方は決して褒められた打ち方ではなく、相手バッテリーに打たされたようなもの。まして打者有利なカウントでこんな打ち方をしてくれたら、相手バッテリーはこれほど有り難いことはありませんから。
捕手視点で言わせてもらえば、このような打者は全然怖くありません。
早いカウントから緩急をつければ、勝手に無理な体勢で打ってくれますからね。
打者有利なカウントでタイミングが合わず、スイングを止められない場合は、そのまま強振して空振りされる方がよっぽど怖いものです。
インパクトの瞬間に手首をアンコックしてはいけない理由を、以下の記事でまとめています。
速いボールに対するタイミングの取り方
速いストレートを投げる投手と対戦するとき、このタイミングの取り方は必ず役に立ちます!
速いボールに対するタイミングの取り方は、始動を早くすることが一番効果的なのです。
普段より早く始動するのです。そして、一連のバッティング動作でボールを見定めタイミングを取るのは同じことなんです。
打てない打者ほど、いつもと同じ始動で、それ以外のバッティング動作を省略してタイミングを早めようとするんです。
だから平気で浅いトップを作ったり、体を捻り戻す前から右肘を抜きにかかったりして、弱々しいスイングを自ら作ります。
速いボールはそれだけ運動エネルギーが大きいですから、打ち返すには打者のスイングにも大きな運動エネルギーが必要です。
ただ、ボールに当てればいいわけじゃないんです!
始動を早めればボールを良く見れないと感じるのは、タイミングを取るポイントが最初の構えたときしかないと誤解しているからです。
この記事で解説したように、実際はバッティング動作の中でタイミングを取ることが可能であり、それができるかどうかで打者の能力が大きく変わるのです。
まとめ
バッティングでタイミングを取ることと、強い打球を打つスイングをすることは、決してトレードオフの関係ではありません。
両方を兼ねることはできますし、絶対にそうすべきです!
この記事で解説しましたが、力強いスイングをするための技術を身につければ、自然とタイミングを取るポイントが増えます。
そして、そのためのコツは以下の通りです。
これができるようになれば、きっとタイミングを取ることが上手になっているはずですよ。
- バックスイングで深いトップを作ること
- フォワードスイングで体を捻り戻してから、右肘を抜くこと(右打者の場合。左打者なら左肘)
- 絶対に構え遅れしないこと
お知らせ
いつもご愛読ありがとうございます。ブログ管理人の ryo です。
このブログとは別に、野球技術解説に特化したブログ『三球入魂~圧倒的な野球力をつけるために!~』も運営しています。
- もっと野球技術のことを知りたい!
- さらに深い野球技術論を知りたい!
- 野球だけの記事を見たい!
といったニーズに適したブログとなっており、『打撃・守備・走塁・投球』と項目ごとに、合理的・物理的に野球技術を解説しています。
ドアスイングを『手とバットが伸びきった状態でスイングすること』だけだと考えていませんか?
↑ドアスイングはこれだけじゃないんです。
↓こんなスイングもドアスイングなんです。
これを理解できないと、ただ内側からバットを出せばインサイドアウトスイングになると勘違いしてしまいます。
インサイドアウトスイングのつもりが、実はドアスイングだった・・・なんてことがありますので注意して下さいね。
詳細な解説は、以下の記事を参考にして下さい。