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超集中状態『ゾーン』に入った?

野球
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超集中状態『ゾーン』

主にスポーツの世界でゾーンという言葉があります。

何でも、究極の集中状態だそうで、時間がゆっくり感じたり、ボールが止まって見えたりするとか

私は、漫画『黒子のバスケ』でこの言葉を知り、漫画の世界だけの話かと思ったら、実際にもあるみたいですね。

実は、私の人生で1回だけ似たような経験があります。

 

高校球児の甲子園予選大会

高校2年の夏の大会、甲子園を目指した我々はベスト16までコマを進めます。

勝てばベスト8進出が決まる試合でのことです。

この年の夏は猛暑。試合を重ねるごとに体力は消耗していきます。

この日も日照りの強い日でした。

 

相手は打撃力の高いチームで、試合前のミーティングでも監督から、

多少の失点はしょうがないから、それ以上点数を取る試合にするしかない。

できるだけ狙い球を絞って打て!

と言われていました。

 

私はいつも通り『5番、キャッチャー』でスタメンです。

試合が始まると異様な雰囲気を感じました。

開催球場は相手高校の地元でしたので、完全アウェイ状態。相手の応援だけでなく、こちらにヤジが多く飛ぶ始末です。

試合は相手の打撃力が強く、毎回ピンチを迎える展開でしたが、何とかエースの先輩が最少失点で切り抜けていました。

ただ、いつ緊張の糸が切れてもおかしくない展開で息が抜けません。

 

私のチームがリードして迎えた終盤、チャンスを迎えます。

1アウト2塁のチャンスで4番。4番はエースの先輩ですが、この大会は猛暑での連投が影響していたのか、バッティングは不調でした。

しかし、このチャンスは勝敗を決める重要な局面です。

私は期待を込めて、ネクストバッターズサークルで戦況を注視していました。

結果は、残念ながら空振り三振。

 

2アウト2塁で私にまわります。

このとき、三振に倒れた先輩の表情が印象的でした。悔しそうな表情でもなく、何か辛そうな、さみしそうな表情に感じました。

先輩がベンチに帰るとき、私とすれ違いざまに声を掛けてきました。

たった一言。ゴメン・・・と。

 

私は、

なぜ謝るんだろう?

ここまで先輩の活躍を認めない者などいないのに・・・

と思った瞬間、言葉では言い表せない不思議な感情が湧いてきます。

 

自然と私はベンチに戻る先輩に、俺が絶対に打ちます!と言いました。

私は普段こんなことは絶対言いません。

自分で言うのも気が引けますが、試合中は喜怒哀楽を押し込めてプレーすることを意識していましたし、ホームランや試合を決めるタイムリーヒットを打っても決してガッツポーズはしません。

私のこだわりの部分なんです

 

そんな私が、なぜ先輩にあんなことを言ったのか、今でも分かりません。

このような状況で打席に入った私は不思議な体験をします。

 

あれほど暑かった日照りを感じない。

あれほど騒がしかったスタンドからの声が聞こえない。

あれほど消耗していた体も疲れを感じない。

野手やランナーも視界に入らない。

そこにいるのは私と相手投手だけ。

例えるなら、誰もいない広い草原に相手投手と私がいるだけみたいな感覚です。

 

何もかもがいつもと違いました。

打席に向かう時も、相手投手の投げそうなボールを整理する判断力も、ランナーを返したいという欲もないんです。

 

ただ目の前に相手投手が立っているだけ。

 

さらに言えば、この投手も私にとっては背景に見えたぐらいです。

初球、相手投手が投げたボールは頭付近のクソボール球でした。

そのボールは真っ白で大きくハッキリと見えました。

私はどちらかというと選球眼が良い方で、そんな球を打とうとしませんし、まして初球ならなおさらです。

しかし、この時はなぜか体が勝手に反応しました。

もう止められない。するとバットにボールが勝手に吸い込まれるような感じがしました。

結果は痛烈なセンター前ヒットでした。

 

ヒットを打って嬉しいという感情もありませんでした。

ただの『当然の結果』にしか思わず、特別に感情が高まっていることも無かったです。

私の人生の中で、こんな体験はこれが唯一です。

 

これが『ゾーン』なのかどうか分かりませんし、そもそもゾーンが本当にあるかどうかも知りません。

でも、ある種の集中状態であったのは間違いないです。

 

そのきっかけは自分自身では無く、孤軍奮闘する先輩の姿が引き起こしたことも間違いありません。

猛暑の中、投げ続ける先輩の球を受け続けてきた私は、先輩の苦労を知っているつもりでしたし、4番打者として君臨する姿は、私が超えたい目指すべき壁のような存在でした。

体力の限界が近い中、三振に倒れ、4番の仕事を果たせなかった先輩の無念の表情を見て、私が仇を討つべく、本能がむき出しになったかもしれません。

こんな不思議な体験ができるのも、団体競技の良いところかもしれませんね。

 

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