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2018年春の選抜大会からタイブレークを導入
2018年春の選抜大会からタイブレークが導入されます。
タイブレーク導入に関しては2014年から日本高校野球連盟(高野連)が導入を検討してきました。
今回の導入は『選手の故障予防』を目的としています。
様々な意見のある中、とりあえず一歩目を踏み出したわけです。
タイブレークとは・・・
時間制限の無い競技で早期決着をつけるルール。
野球の場合は・・・
規定イニング突入後、無死一、二塁や1死満塁など、点が入りやすい状況から攻撃を始め、試合を決着しやすくする。
タイブレークの内容
現状(2017年11月)においては、細かい内容は正式決定しておりません。
2018年1月10日に予定されている選抜大会運営委員会で発表されることになっています。
以下の内容は、ほぼ決まっている模様です。
・延長13回から突入
・準決勝まで延長再試合は廃止
タイブレークにおけるアウトカウントや走者の設定は決まっておらず、内部調整するようです。
また、決勝戦での導入の有無、地方大会での導入なども現状は決まっておりません。
タイブレーク方式は賛否両論
とりあえず、やることは決まったタイブレークですが、いまだ賛否両論あります。
賛成意見
・能力ある有望な選手を守るためには必要。
・暑い中での連投や延長戦は虐待に近い。
・新しいルールでも名勝負は生まれる。
・故障回避に十分とは言えないが、選手の負担が減るのは良いこと。
・やらないよりマシ
全面的に賛成というわけではないが、選手を守るためには導入やむなし、という感じでしょうかね。
反対意見
・野球のルールを変えるな!
・延長で繰り広げられた数々のドラマが一切無くなる。
・高校球児が完全燃焼できないのではないか?
・高校球児にとって甲子園が最終目標なのだから、制限をかける必要はない。
・余裕のある日程を組むことで解決すればよい。
・投球制限、ベンチ入りの人数を変えることで解決すればよい。
反対意見は色々な内容がありますが、大きく分けると以下のようになります。
・観客的立場から高校野球がつまらなくなることを危惧
・高校球児が試合結果に納得しないのではないか?
・選手の故障予防は必要だが『タイブレーク方式では不十分』だから反対
タイブレークでは選手の故障は防げない
まだ正式決定ではありませんが、今のところタイブレーク突入条件は『延長13回以降、一死一二塁で開始』が有力とされています。
この条件なら、タイブレークで選手の故障が大幅に減ることは期待できないと思います。
勝負がつきやすいとはいえ、延長13回以降も試合は続行される訳ですからね。
それ以前に、延長13回に突入することが稀です。
さらに投手はピンチの場面での投球になりますので、より力を込めた投球になります。
余裕のない状況での投球は、より投手に負担をかける可能性も高くなります。
タイブレーク方式以外の案って無いの?
実際、タイブレーク以外に選手の負担を減らすために色々な案があります。
どれもメリット・デメリットがあります。
投球制限(登板間隔)
WBC(ワールドベースボールクラシック)にも導入されていますね。
投球制限とは・・・
一人の投手が1試合で投げられる投球数に上限を設ける方式。
登板間隔制限とは・・・
投手が1試合に投げた投球数に応じて、規定登板間隔を開けなければいけない方式。
メリット
投手の投げすぎを防いだり、連投による疲労蓄積を避けられる。
投手の故障予防には有効。
デメリット
エース級を何人も揃えられるチームと、揃えられないチームで大きな差が出やすい。
さらに投手を降板させるために『カット打法』が流行る可能性があり、野球がつまらなくなる可能性がある。
余裕のある日程を組む
現状のような過密日程を解消する方法です。
甲子園のみならず、地方大会でも雨天中止や引き分け再試合が続くと、3連戦、4連戦とならざるを得ません。
メリット
投手の登板間隔が開くので故障回避に有効。
調整期間があるので、選手はコンディションを調整出来る。
デメリット
選手に関してデメリットなし。
参加高校数を考えると、現状の『地区大会を勝ち進む→甲子園』をそのままやると、長期間の大会になってしまう。
チームの移動が大変になり、交通費・宿泊費などが膨らむ。
短期だけでなく長期的な改善策も必要
タイブレーク方式の導入は短期的な改善策と言えます。
個人的には『やってもあまり意味は無いが、やらないよりマシ』だと思っています。
いずれ別記事で触れたいと思いますが、高校野球は単なる部活動の枠を超えて、利益を生み出すコンテンツになっています(直接的に選手には還元されませんが)。
要は利権が絡んでいる訳です。
ですので、
死闘やドラマが減る!
高校野球がつまらなくなる!
と言った、ファン目線の意見を無視できない背景があります。
余裕のある日程を組んだり、トーナメント方式の見直し等、根本的なシステム改善策は実施が難しい状況です。
故障予防やケアの知識を知る
現状、システムの大掛かりな変更は難しいことは一旦置いておきます。
ただ、短期的な改善策と平行し長期的な改善策も必要ではないでしょうか。
例えば、高校の監督・コーチが故障予防やケアの方法などを学べる環境を、今以上に作るようにするのです。
・各都道府県に講師(トレーナー)を派遣し、参加費無料の講習会を開く。
・故障予防やケアの方法について知識を得る。
・各高校の指導者には年間数回の参加を義務付ける。
・高野連が主導する(開催費用・交通費は高野連が負担)。
こういったことは故障回避に対し即効性はないでしょう。
しかし、知識を共有し故障予防やケアの方法を知ることによって、将来防げる故障もあるのではないでしょうか?
故障予防やケアの方法など、現状は指導者の知識の有無によって、かなり差があると思います。
地道な活動になると思いますが、選手を守るために知識をつけるべきだと思います。
甲子園だけが問題ではない!
高校球児の肩や肘の故障は、甲子園や地方大会の連投だけが原因ではありません。
将来を有望されていながら、甲子園での連投により肩や肘を壊して、選手寿命が短くなった選手はニュースになったりして、世の人に知れ渡ります。
しかし、それ以上に無名の選手が肩や肘を壊し、スポットライトも当たらず選手寿命を終えることも多いのです。
彼らを守るのは、タイブレークや日程の緩和だけでは絶対無理です。
故障し易い体の部位や体の使い方や鍛え方、日ごろできるケアの方法などを知る必要があるのです。
高野連は目先の改善だけにとらわれないで、長期的な改善案も積極的に打ち出して欲しいと願っています。
高校野球の主役は選手なのですから。