松坂大輔と斎藤佑樹が同じ?
2018年1月に前衆院議員の上西小百合氏が以下のようなツイートをしました。
松坂大輔、中日入団。人気、実力、期待度の全てが斎藤佑樹と同じ
松坂大輔は、2018年1月23日に中日ドラゴンズの入団テストを受け、即日合格しました。
それを受けてのツイートです。
高い知名度に対し近年は成績を残せず、今後も活躍する可能性が低いことを揶揄しています。
しかし、それは安易な表現であり、野球ファンからすると軽すぎる言葉です。
それは、松坂大輔と斎藤佑樹のプロにおける実績は全く異なり、今後活躍するためのプロセスが全く異なるからです。
今回の記事は、松坂大輔と斎藤佑樹の球歴を振り返り、現状置かれている立場と今後の期待感についてお話したいと思います。
松坂と斎藤の球歴
まず、松坂大輔と斎藤佑樹の輝かしい球歴を、簡単に振り返りたいと思います。
両者と高校野球のスターであり、野球ファンでなくても名前を知られる選手でした。
松坂と同年代は『松坂世代』、斎藤佑樹と同年代は『ハンカチ世代』と称され、世代を象徴する存在だったのです。
松坂大輔の球歴
- 1980年9月13日生まれ
- 右投げ右打ち
- 1998年に春夏連覇(横浜高校)
- 1998年の夏の甲子園、準々決勝でPL学園と延長17回の死闘を演じ(完投勝利)、決勝の京都成章戦ではノーヒットノーランを達成し優勝
- 高校で150km/hをマークするとともに、高校生離れしたスライダーを操り『平成の怪物』と称される
- 1998年、ドラフト1位で西武ライオンズに入団
- ルーキーイヤーの1999年に16勝5敗で最多勝を獲得。その他、最高勝率・ゴールデングラブ賞・ベストナイン・新人王とタイトルを獲得
- 1999年~2006年まで西武ライオンズでプレーし、その間NPB通算108勝を挙げる。この間、最多勝3回、最多奪三振4回、最優秀防御率2回獲得
- 2006年、2009年に行われたWBCでは日本の二連覇に貢献し、二大会連続のMVPに輝く
- 2007年にポスティングシステムでボストン・レッドソックスに移籍。2012年まで、レッドソックスでプレー
- 2011年、右肘の故障のためトミー・ジョン手術を受ける
- 2013年~2014年はニューヨーク・メッツでプレー
- MLB通算 56勝43敗、防御率4.45
- 2015年~2017年はソフトバンクでプレーするも、一軍公式戦での登板は僅か一試合に留まる
- 2018年に中日ドラゴンズに入団テストを経て入団
斎藤佑樹の球歴
- 1988年6月6日生まれ
- 右投げ右打ち
- 高校は早稲田実業学校高等部
- 2006年、夏の甲子園で3連覇を狙う、田中将大擁する駒大苫小牧高校と決勝戦でぶつかり、延長15回を投げ抜き同点再試合。翌日の再試合でも先発完投し優勝に貢献
- マウンドで青いハンカチで顔の汗を拭う姿から『ハンカチ王子』と呼ばれる
- 2007年早稲田大学教育学部に入学
- 大学では1年生ながら東京六大学春季リーグ戦で開幕投手を務め勝利投手になる(80年ぶりの快挙)
- 2010年ドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団
- ルーキーイヤーの2011年は6勝6敗、防御率2.69の成績を残す
- 2012年開幕投手を務め、完投勝利を挙げる
- 2012年、右肩を故障し『関節唇損傷』と診断される
- 2018年2月現在、NPB通算13勝23敗、防御率4.74
プロでの実績は全然違う
冒頭にも書きましたが、両者の大きな違いはプロでの実績です。松坂が日米通算164勝を挙げているのに対し、斎藤は13勝に過ぎません(2018年3月現在)。
さらに松坂は野球の最高峰リーグであるMLBで実績を残し、WBCでもMVPを獲得するなど、トップレベルの活躍をしていました。
斎藤は一軍でフルに活躍したことがなく、NPBでタイトルを取るような活躍をしたことはありません。
2018年、両者が置かれている立場
松坂は度重なる怪我や違和感により、近年はまともに投げられていません。2015年~2017年に在籍したソフトバンクでは、一軍登板数が僅か一試合に終っています。
2018年から中日ドラゴンズでプレーしますが、活躍できるか?の前に、打者を相手に投げられる状態かどうかがスタートラインでしょう。
もちろん、2018年シーズンも近年同様、打者相手に投げられる状態になれなければ引退する可能性は非常に高いと言えます。
斎藤は2012年に関節唇損傷という怪我をしたものの、リハビリにより近年は『打者に投げられる状態』にはなっています。
しかしながら、思うような活躍が出来ず一軍と二軍を行ったり来たりするシーズンが多いです。
今年で30歳となりプロ8年目となりますが、そろそろ一軍に定着できないと自由契約になる可能性も高くなってくるでしょう。
活躍するためのプロセスの違い
松坂はかつてトップレベルの選手であり、プロで十分な実績があります。しかしながら、怪我により全盛期のボールが投げられない状態が続いています。
今後活躍するためには、肩や肘に痛みの出ない投げ方を見つけ、
- 全盛期に可能な限り近づこうとするのか?
- 1からモデルチェンジをするのか?
と、いずれかのプロセスを踏むことになるでしょう。これらは松坂自身が納得した上で決めることですし、松坂の感性が問われることでしょう。
松坂には実績があるので、プロで活躍するために『どんなボールを投げれば通用するか』は頭や体が分かっているはずです。
怪我が原因でそれが実現できない現状。それを打破するために、どんなスタイルを目指すのか?
松坂が活躍するポイントはそこにあります。
斎藤の場合は、実績がありません。
斎藤も怪我をしていますので、理想の投げ方が出来ないかもしれません。しかしながら、彼の歩んできた道にプロで活躍できる『正解』はありません!
彼自身が理想の投げ方が出来たとしても、プロでの活躍に繋がる可能性は限りなく低い。実績がそれを証明しています。
すなわち斎藤の場合、まず『プロで活躍するために必要な技術を身につける』ことが必須なのです。
プロ入り以来、この課題は変わっていません。
これまで活躍できなかったことと正面から向き合い、彼が積み重ねてきた技術論や理屈を根本から見直す必要があるでしょう。
斎藤が活躍するために必要なプロセスは『進化』でなく『変化』なのです。
冒頭に書いたとおり、松坂と斎藤は表面上、上西氏のツイートのように似ている立場に見えるかもしれません。
しかし両者はプロでの実績が全く異なり、それにより今後彼らが辿るプロセスは異なるのです。
野球に限らずスポーツは、選手の考え方や努力、バックボーンを知ることにより、見ている人は感動・落胆がより大きなものになります。
表面上の人気や成績だけでなく、選手についてより理解することによって楽しみ方が増えますし、もっと違った角度から物事が見えてくると思うのですがね。
【追記】2018年12月
2018年、松坂大輔が残した成績は以下の通りです。
- 防御率 3.74
- 勝敗 6勝4敗
- 投球回数 55.1イニング
- 12年ぶりのオールスター出場
- カムバック賞を受賞
ここ数年満足に投げることができなかった松坂ですが、2018シーズンで見事に復活を成し遂げました。
2019年からは背番号が99から18に変更になり、さらなる活躍が期待されます。
2018年、斎藤佑樹が残した成績は以下の通りです。
- 防御率 7.27
- 勝敗 0勝1敗
- 投球回数 8.2イニング
残念ながら、2018年も活躍することはできませんでした。一軍登板数も僅か3試合に留まり、ほぼ二軍暮らしに終りました。