現代の必需品になった「USB充電器」「充電用ケーブル」ですが、これにモバイルバッテリーの機能を詰め込んだものが「Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)」です。宿泊を伴うお出かけの際にはピッタリであり、かつ防災にも役立つ便利なアイテムとなっています。
ざっくり機能を説明すると以下の通りです。
- 1台3役のハイブリッド設計(モバイルバッテリー+USB急速充電器+USB-Cケーブル)
- 本体バッテリーは10,000mAhの大容量
- AC100Vプラグ(折り畳み式)を内蔵し、コンセントに差すだけで本体への充電が可能+急速充電器としても使用可能
- USB-Cポートも1個あり、一体型のケーブルと合わせて2台同時に充電可能
- 本体バッテリー容量を示すディスプレイ付き
オールインワンモデルなのでとにかく楽!とりあえず、これを持って行けば安心というアイテムですね。外観や細かい性能に関してはこの記事内で細かくチェックしていきますが、中でも
10,000mAhのバッテリー容量でスマホを何回充電できるんだろう?
と気になる人も多いと思います。
自分が使っているスマホのバッテリー容量が4,000mAだから、「10,000mAh ÷ 4,000mA=2.5」となり、2.5回分は充電できるな・・・
と考えている人は要注意!
何となく合っていそうな計算方法ですが、この計算方法は間違いであり、実際は違った結果になるのです。この記事ではモバイルバッテリーからスマホへ充電する際の計算方法を解説しつつ、現実に充電可能な回数をテストしていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
この記事の目次
「Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)」の基本スペック
まずは「Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)」の基本スペックから。
メーカー | Anker |
品番 | A1637 |
発売年 | 2024年 |
本体サイズ | [長さ]108mm [幅]51mm [厚み]31mm |
重量 | 約250g |
入力1 (AC) | 100-240V 50-60Hz 1.5A |
入力2 (USB-C) | 5V-3A 9V-3A 15V-2A |
出力1 急速充電器 | 【単ポート利用時】 5V-3A 9V-3A 10V-2.25A 15V-2A 20V-1.5A 【2ポート同時利用】 最大出力5V-3.6A |
出力2 モバイルバッテリー | 【単ポート利用時】 5V-3A 9V-3A 10V-2.25A 15V-2A 20V-1.5A 【2ポート同時利用】 最大出力 5V-3A |
ケーブル長さ | 約255mm |
トータル 電池容量 | 10,000mAh |
本体カラー | ブラック ホワイト ピンク ブルー パープル |
Battery Capacity | 5,000mAh 7.2VDC 36Wh |
定格電圧 | 5VDC |
定格容量 | 6,000mAh |
※赤字は本体に記載されているもの
上記スペック表を見て分かる通り、電池の容量を示す数値として、「トータル電池容量 → 10,000mAh」「Battery Capacity → 5,000mA」「定格容量 → 6,000mA」と3つもあり、どれが本当の電池容量なのか分からない人もいると思います。これらの数値はそれぞれに意味があり、モバイルバッテリーの性能を示す重要な数値となります。
具体的な数値の算出方法はスマホ充電の項目でも触れることにし、ここではこれらが意味する内容だけを説明します。
トータル電池容量(10,000mAh)
モバイルバッテリー全体の電池容量を示しています。本製品は3.6V・5,000mAhのリチウムイオン電池が2本内臓されておりますので、5,000mA×2本=10,000mAhという意味です。
Battery Capacity(5,000mA)
単セル当たり(リチウムイオン電池1本当たり)の電池容量を示しています。
定格容量(6,000mA)
本製品では「定格電圧」を5VDC、「定格容量」を6,000mAhと定めていますが、これは出力電圧が5Vのとき、取り出せる容量が6,000mAhであることを示しています。
えっ! 10,000mAhという表記だったのに、実際は60%の6,000mAhしか取り出せないの?
と思うかもしれませんが、単純に表記の60%しか取り出せない訳ではありませんから、ご安心を。その理由は後ほど説明します。
外観レビュー
表面
本体カラーは左がホワイト、右がブルーになります。ホワイトは清潔感のある真っ白なカラーであり、ブルーはやや淡い感じの水色です。ロゴのある表面は光沢があり高級感を高めています。ホワイトとブルーに関してはカラーが明るいこともあって指紋が目立ちにくい印象ですね。
背面
表面以外は光沢のないプラスチックです。手触りはサラサラしており質感が高いです。
側面
側面は上下左右ともに粗目の凹凸が設けられており、滑り止めの役割を担っています。持ち運ぶことが多い製品ですので、このような配慮はありがたいですね。
上面
本体上面にはUSB-Cプラグを固定できるようになっています。金属製の引っ掛けがあるため、USB-Cプラグが抜けることはありません。
USB-Cプラグの固定
USB-Cプラグが収まる所にはマグネットが内臓されており、USB-Cプラグがずれることはありません。
USB-Cプラグ
当然、USB-Cプラグ側にもマグネットが仕込んであります。これにより本体にしっかり固定できる仕組みになっています。
USB-Cポート・バッテリー容量表示ボタン
内臓してあるUSB-Cケーブルだけでなく、本体にはUSB-Cポートも1つあります。このポートは入力・出力に対応しています。すなわち、USB-Cポートから他の製品を充電することもできますし、他の充電器からUSB-Cポートを通じて本体を充電することも可能なんです。これは融通が利いていて便利ですね。
バッテリー容量表示ボタンは本体のバッテリー容量を確認したいときに押します。また、本体の充電をしているときや、他の製品を充電しているときなどはバッテリー容量が自動で表示されるのですが、これが目障りで消したい場合はこのボタンを押すことで消すことができます。
バッテリー容量表示の見え方
バッテリー表示に関しては、本体カラーがホワイトでもブルーでもしっかり見えます。購入前、「本体カラーが明るい色だと見えにくくないのかな?」とちょっと心配だったのですが、杞憂でしたね。
このような表示部分ってカメラでは撮影しにくく、レビュー画像によっては色味がおかしかったり、表示が欠けていたりするのですが、実物は白色表示でしっかりと視認できるのでご安心を。上記画像は実際の見え方と非常に近いものになっています。
折りたたみ式AC100Vプラグ
AC100Vプラグは側面についており、折りたたみ式になっています。
PSEマーク
当然ながらPSEマーク付きです。
本体サイズ・重量
本体サイズ
本体サイズはプラグ部を除いて「108 x 51 x 31mm」となっています。スペックを考えれば小柄にまとまっていると思います。
iPhone 12 mini との比較1
スマホとしてはかなり小型な iPhone 12 mini と比較してみると、「Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)」の方が一回り小型です。
iPhone 12 mini との比較2
本体厚みは31mmであり、さすがに厚みを感じますね。
充電しながらのスマホ使用は難しい
充電しながらのスマホ使用はハッキリ言って難しいです。重量も250gでそこそこ重いですし、本体の厚みがありますので、スマホを操作することが難しいです。どうしてもやるなら両手使いは必須ですし、緊急時以外はおススメいたしません。
本体重量
本体重量は246gでした。小型な形状も相まって、そこそこの重さを感じます。大型なスマホだと200g超えも珍しくありませんが、それよりも50g重いですからね。ただ、急速充電器+モバイルバッテリー+USB-Cケーブルのオールインワンモデルですので、それを考えたら頑張ってる方だと思いますけどね。
本体充電スピード(0%→100%)
本体を充電する方法は3つあります。
- 本体のAC100Vプラグをコンセントに差して充電する
- 他のUSB充電器から本体にあるUSB-Cポートを通じて充電する
- 他のUSB充電器から本体付属のUSB-Cケーブルを通じて充電する
2番目と3番目の違いはケーブルだけですから、実質AC100V充電とUSB-C充電に分けられます。そこで、それぞれの方法で充電し、本体の容量表示が0%から100%になる時間を測定してみました。
結論を先に書くと「充電にかかった時間は、どちらもほぼ同じで約2時間くらい」となりました(本体を充電するために用いたUSB充電器は65W品)。
本体充電スピード比較
どちらも2時間程度で充電が完了していますが、正確に言うとUSB-C充電の方が早かったです(USB-C充電 → 105分、AC100V充電 → 120分)。
充電初期はAC100V充電の方が早いのですが、途中からUSB-C充電に追い抜かれてしまいます。充電中に本体を触ってみると、AC100Vで充電している方が明らかに熱いので、温度が原因で充電スピードを絞っていると思われます。部品のばらつきや個体差によるものの可能性がありますので、測定に用いた機体を入れ替えて再度測定してみましたが、やはり同じような結果となりました。
ただAC100Vで充電している方は常に本体が熱いわけではなく、ある程度充電が進むと発熱は収まりますので、そこまで気にすることではないかもしれません。
スマホを充電しながらコンセントに差すとどうなるの?
内臓ケーブルとスマホを接続し、その状態でAC100Vコンセントに差し込んだ場合はどのような動きになるのでしょうか?
このような場合はスマホへの充電が優先され、スマホの充電が完了次第バッテリー本体への充電を開始するようになっています。
スマホ充電と本体充電の関係
上記グラフは「スマホと本体のバッテリーが0%の状態で、両者を内蔵ケーブルで接続しながらAC100Vコンセントに差した場合」における、充電スピードを表したものです。
仕様的には「スマホの充電が完了次第バッテリー本体への充電を開始する」となっていますが、実際はスマホのバッテリー表示が90%近くになったところから本体への充電が始まっています。おそらく、スマホへ供給する電流が少なくなると本体への充電を開始する制御になっていると思われます。
これはこれで理にかなった制御ですね。スマホ側の充電がある程度進むと電流を絞って電池をいたわる制御が一般的ですし、スマホ側の充電が100%になるのを待っていたら、本体への充電開始が相当遅くなりますからね。
ただ、この状態だと本体への充電がいつも遅く、本体の容量表示が0%から100%になるまでに3時間もかかりました。これはスマホへの充電に電流を取られていることが原因でしょう。スマホの容量表示が100%になっても、すぐに充電をストップするわけではなく継続して充電し続けるんですよね。まぁ、これは接続機器(この場合はスマホ)の制御なので仕方ありませんし、システム全体を見たときにスマホへの充電が優先される制御はユーザビリティ的には正しいと思います。
スマホを何回充電できるのか?
放電性能を紐解くために、まずはスペックをおさらいします。
- トータル電池容量:10,000mAh
- Battery Capacity:5,000mA、7.2VDC、36Wh
- 定格電圧・定格容量:5VDC、6,000mA
このモバイルバッテリーを用いて、電池容量4,000mAのスマホを何回充電できると思いますか?
10,000mAh ÷ 4,000mA=2.5。充電できる回数は2.5回!
定格容量が6,000mAだから、6,000mAh ÷ 4,000mA=1.5。よって充電できる回数は1.5回!
残念!どちらも違います。
まずは結論から。答えは約1.8回となります。
公式HPには「Galaxy S24を約1.8回充電することができます」と記載されており、Galaxy S24の電池容量は4,000mAhとなっています。また、私が使っている Galaxy S20も同じく電池容量が4,000mAhであり、実際に充電を行ったところ約1.9回充電したところで本体容量表示が0%となりました。
なぜ、このような結果になるのでしょうか?
この理由は以下に説明しますが、「面倒な話はいいや・・・」と思う人は読み飛ばしてください。
電池容量の考え方
- トータル電池容量:10,000mAh
- Battery Capacity:5,000mA、7.2VDC、36Wh
- 定格電圧・定格容量:5VDC、6,000mA
このスペックから以下のことが分かります。
- 1セルのスペックは3.6V、5,000mAh
- 本体には2セルが直列接続されている(=7.2V)
- 昇降圧回路の効率が83.3%
「1セル3.6V、5,000mAh」のリチウムイオン電池を直列接続すると、「7.2V、5,000mAh」となります。これをW(ワット)表記に直すと、
7.2V × 5Ah = 36Wh
となります。これを示しているのが「Battery Capacity」ですね。また別の見方をすると、「3.6V、5,000mAh」のリチウム電池が2本あるので、合計容量が10,000mAhとなります。これもW(ワット)表記に直すと、
3.6V × 5Ah ×2本 = 36Wh
となり、見方が違うだけで蓄えられた電力は同じことが分かります。つまり、「トータル電池容量:10,000mAh」という意味は「3.6Vのときの電池容量」なのです。
ここでモバイルバッテリーとしての出力電圧について考えてみます。モバイルバッテリーに内臓されている電池の電圧(3.6Vや7.2Vなど)を「そのまま」モバイルバッテリーの出力電圧として使う訳にはいきません。そもそも電池電圧は負荷によって(流れる電流によって)変動しますし、接続される製品(今回で言えばスマホのこと)によっては適切な電圧でないこともあるからです。
そのために決まった電圧で出力する必要があるのですが、それが5V・9V・15V・20Vに相当し、USB-C(PD)の規格として定められています。簡単に言えば、互換性を持たせて様々な機器に使えるようにするってことですね。
話を元に戻します。
Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)に蓄えられる電力は36Whでした。本体の電池電圧を7.2Vとすると、5Vで出力する場合は電圧を下げてやる必要があり、そのためには電圧を変換する回路が必要となります。この変換するときの効率は100%という訳にはいかず、一般的には80%前後なのです(ロスのほとんどが発熱)。
7.2V × 5Ah × 0.8(効率)=28.8Wh
効率を80%、5Vで出力した場合に取り出せる電力は28.8Whとなります。これを電流に直すと、
28.8Wh ÷ 5V = 5.76Ah(5,760mAh)
となります。
Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)における定格電圧・定格容量は規定されており、「5V、6,000mAh」でした。つまり、ここから変換効率が逆算でき、その結果が83.3%となるのです。これが「3.昇降圧回路の効率が83.3%」の根拠です。
ここまでを一旦まとめると、以下のようになります。
- 本体(リチウムイオン電池)に蓄えられる電力は36Wh
- 出力電圧を5Vに変換したときに取り出せる電力は30Ah
次に、スマホ側(Galaxy S20)について。
Galaxy S20の電池スペック(typical capacity)は3.86V、4,000mAhとなっています。これをW(ワット)表記に直すと、
3.86V × 4Ah = 15.44Wh
となります。つまり、モバイルバッテリー側から出力される最大値が30Wh、スマホ側で必要となる最大値が15.44Whとなります。モバイルバッテリー側から出力される電力の全てがスマホ充電に充てられる訳ではなく、やはりここでもロスは発生します。
仮にロス分が10%、すなわち90%の効率で充電されたとすると、
30Wh × 0.9(効率)÷15.44Wh = 1.75回
となり、この計算では1.75回充電できることになります。
現実には、モバイルバッテリーやスマホの電池容量を全て使い切ることはなく、たとえ表示上「0%」であっても最低限の動作が出来るように設計するので、若干計算値と実際の回数にはずれが生じます。まぁ、この計算でも大体の充電回数は算出可能ですから十分ですけどね。
防災用品として有用!
モバイルバッテリーを防災用品として使いたい人もいると思いますが、一般的は不向きです。なぜならモバイルバッテリーに用いられるリチウムイオン電池は自己放電するからです。つまり、満充電にして放置しておいても、自然に容量が抜けていくのです。かつて使われていたニッケル水素電池に比べればリチウムイオン電池の自己放電率は抑えられていますが、それでも自己放電を防ぐことはできません。またモバイルバッテリーの性質上、完全な無負荷という訳ではなく、接続されている回路に流れ込む電流も無視できませんので、より早い容量低下を招くのです。
いざ避難したときにモバイルバッテリーを使ってスマホを充電しようとしたら、バッテリー残量がほとんどなかった…なんてケースは嫌でしょ?だからと言って、避難道具の中にしまいこんだモバイルバッテリーを定期的に充電する…なんてことも面倒です。
その点、この記事で紹介している「Anker Power Bank(10000mAh,Fusion,Built-In USB-Cケーブル)」は防災用品として有用です。と言うのも、普段は急速充電器として使っていれば、本体はいつもAC100Vコンセントに繋がれたままなので、常に満充電の状態を維持できるからです。もちろん、災害時に避難するときはこれを外して持ち運ぶ必要がありますが、常用しているなら素早く持ち運べる可能性は高いと思いますし、外部に持ち運ぶ必要ない停電時などは確実に使えるでしょう。
このような効能を期待するなら、モバイルバッテリーとしてガンガン使う人より「普段は急速充電器として使いつつ、たまにモバイルバッテリーとして使用する人」の方が適していると言えるでしょう。
まとめ
この記事では「Anker Power Bank (10000mAh, Fusion, Built-In USB-C ケーブル)」を詳しくレビューしました。「モバイルバッテリー+USB急速充電器+USB-Cケーブル」のオールインワンモデルのため、どの機能にフォーカスするかで価値が変わる製品だと思います。
個人的には買って正解でした。宿泊するときはコレ1台で十分ですし、何より準備が楽。あと、私にとってモバイルバッテリーが必要となる場面は年に数回レベルなので、普段は急速充電器として使用しています。充電器は家に何台にあっても困りませんし、先程述べたように防災用品として控えているのも心強く感じます。
毎日のようにバイルバッテリーとして使う人ならもっと重量の軽いモバイルバッテリーをおススメしますが、会社や出先で気軽に本体を充電できるメリットもありますから難しいところですね。逆に言えば、「どんなシチュエーションにも対応できる製品」と言えますし、使い方は人それぞれとも言えます。そう考えれば、とりあえず1台持っておいても損はないと思いますよ。